

Notes on Rambling
vol.2 Keiji Kaneko
What’s Notes on Rambling
イギリスで古くから親しまれ、受け継がれてきたランブリングを背景に生まれたブランド、〈Caledoor〉。コレクションは、都市や自然を行き来しながら、“歩くことそのものを楽しむ”という視点でデザインされています。都市と野外、自宅周辺と旅先、国内と海外…あらゆる日常と非日常をシームレスで繋ぐ。そんなアイテムに袖を通し、街を歩いてみることで、行為そのものを見つめ直すとともにブランドの本質やプロダクトの魅力に迫ります。
当てもなくただただ歩く。その行為は、あらゆる物事が想定を超える速さで周囲を駆け抜け、人工知能が即座に疑問に応える今の世の中において、もしかするともっとも必要な行為なのかもしれません。移り変わりの激しいアパレル業界において、ファッションディレクターの金子恵治さんはそれを以前から実践してきました。彼のスタンスを端的に言うなら、“僕の前に道はない、僕の後ろに道はできる”といったところでしょうか。その根元に触れたとき、彼が根っからのランブラーであることがよく分かります。
ランブリングはカルチャー
であると同時に精神性でもある

これまで意識的に散歩をする時間をとられたことは?
自転車やランの時間を意識的にとってきたことはありますけど、歩くためにはなかなか……。そこまで余裕がないのもありますが、そもそも仕事の移動で歩くことが多いですから。
バイヤー時代、パリなどを訪れた際には、地図を片手に通ったこともない道をひたすら歩き新たな発見へ繋げてきました。それに、道中はなるべく目的地を設定しないようにしていたんです。知らないところをナチュラルに歩いていると、意外と普段は気づかなかったことに気づけたりする。目的を持っちゃうと、頭がそればっかりになり思考が狭まるので。

金子さんと同じような動きをするバイヤーさんはいないかもしれませんね。
足で稼ぐバイヤーと昔の人からは言われていました。20代の頃、みんなが海外の展示会を見終わり、カフェでお茶したりパブでお酒を飲んだりしている間に僕は街中をずっと歩いていました。でかいリュックを背負い、汚い格好をしてピッティへ行きさっさとオーダー。そして、街へ出ては自分の知らなかったお店を渡り歩きながら現物買いして商品をかき集める。それを夜までやっていましたよね。

当てを作って誰かと競争したときに勝てる気がしないですよ。1人の土俵でやるってことでしか、ビジネスとしてもきっとうまくいかないだろうと思っていました。だから、当てを作らずとにかく歩き続け、自分なりの発見をしてそれを伝える。そこで面白いと思ってもらえたらラッキー、みたいな感覚でずっとやってきています。当てもなく歩く行為のランブリングは、まさしく僕そのものと言い切れるかもしれませんね。

金子さんのライフスタイルの中に自転車がありますが、歩くとの違いをどのように捉えていますか?
スピード感がまずは違いますよね。僕は自転車にも乗るけれど、歩くスピードとは明らかに見えるものが違う。それは多分、気づきのうえで何倍もの差となって現れるはずです。なにせ、運転に集中しなくていいですからね。その分、視野が広がりますし頭の中で深く考えられます。そして、何気ないところにも幸せを感じられ、心が満たされていく。要は、日常を過ごすスピード感を緩めましょうみたいなマインドが大事なのかなと。ランブリングとはひとつの精神性な気がします。
愛犬と都市を歩くことの有用性

仕事以外で歩く機会はありますか?
ここ2年ほどは、犬を飼っているので必ず散歩には連れて行きます。連れていくというよりは、彼女が行き先を決めるので連れて行かれる、と言った方がいいかもしれません(笑)。
ブルテリアという闘犬なんですけど、目的意識のある犬で毎日歩く方向が違う。いろいろ連れ回されますけど、かえってそれが頭を空っぽにするうえではちょうどいいんですよね。日中はもう仕事のことでほぼ頭の中が埋め尽くされていますから。

愛犬との散歩で、ほかに恩恵を感じる瞬間はありますか?
犬との散歩はめちゃくちゃリラックス効果があって、すべてをリセットできる感覚があります。もう食事と同じぐらい生活に根付いていますね。それに、クリエイションみたいなことも考えなきゃいけないし、解決しなければいけないこともたくさんある。でもそれは、デスクに向かって考えるより、空っぽのまま歩いている時の方がパッとアイデアとして出てくることの方が多いんです。

身体的な面で効果を実感することはありますか?
自転車では回復走といって、追い込んだあとにクールダウン的意味合いで走ることがあるんです。散歩はそれに近く、体がほぐれていくのが分かります。例えば、朝に自転車のトレーニングをしようとなったら、なるべく犬の散歩の予定を先に入れ、その後、準備体操もなくトレーニングをすることもよくありますね。
Caledoorは道具としての質を担保しながら
情緒的な部分も忘れない

歩く際に着る服はどういったものが多いですか?
これといって決めてはいないのですが、崩し過ぎないようには気をつけているつもりです。もういいじじぃですからね(笑)。犬の散歩バッグにビリンガムを使ったり、ファウンダーのシャツも洗いざらしよりは一度スチームを当てるみたいにひと手間加えたりします。

今回足を通したジェイエムウエストンのゴルフもそう。歩く=スニーカーとはさほど思っていなくて。別にスニーカーでも柔らか過ぎて疲れるときがある。革靴は履き慣れたものならスニーカーより意外と楽なんですよ。

今回着ているアウターはCaledoorのジャケットですね。
これは襟が気にならなくていいですよね。どこかベルスタッフっぽいというか。やや立体的なパッチポケットですが、この手のタイプだと立体的すぎれば煩わしさを感じてしまう。スマートさを出しつつ物を入れるときにはちゃんと入るみたいなバランス感はいいですね。

それに、ショルダーバッグやデイパックをよく背負う自分としては、肩の生地が二重になっているのも頼もしさを感じます。また、個人的にアウターは袖の調整が結構大事だなと思っていて。腕を動かしても下ろしてもいい塩梅で手首周りに収まってほしい。これはちょうど良いと着てみて思いました。


ブランドのことを初期の頃からよく知る金子さんから見て、何かしら変化は感じられますか?
袖を通してすぐに感じたのは着やすさですね。ファッションだけれど、道具としても有能でなければいけないというのがCaledoorが目指していることだと思うんです。きっといろんな人が着て意見をもらい、自分たちも着て気づいたことを落とし込んでいく。そういうチューニングをなん度も繰り返して進化に繋げている印象を受けます。だから完成度はより上がっていますよね。とはいえ、根本はブレていない。最初から目指すところとやるべきことが明確だったのでしょう。
ジップなんていい例かもしれません。おそらくYKKの方が使いやすいけれど、こっちの方が断然、雰囲気はいいですよね。気に入ったものを妥協せず使おうみたいな心意気は個人的にくすぐられます。
ただ便利なモノを作るだけじゃなく、情緒的なところも忘れない。服を作るうえで、そういった個性は大事ですよね。
PROFILE
金子恵治
ファッションディレクター



























